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ふっ、となずなの顔が離れていく。白い両手が、俺の肩から二の腕、手の甲へと優しくすべり落ちた。
「なずな・・・」
「っつ、ごめん、ね。でもね、すごく・・・しあわせ」
少し震えながら、ふわっと笑みを浮かべたが、悲しくて、寂しいものに
見えた。
・・・だめだ。
そう思った。
ずっと、このままでいたいと、俺も、なずなもそう願ってたんだ、また
離れる必要なんでどこにもない、間違っている。
両手をなずなに伸ばしたと同時に、ふっと俺から離れ、カウンターの
外に出た。慌てて立ち上がり、向かいのなずなの顔を見る。
大人なのに、いたずらが大好きで、わがままで、素直で、とっても美人で、
可愛くて、優しくて・・・少し寂しそうな笑顔。
「・・・・・・」
「・・・・・・あのね」
「いやだ」
思い出した。
「・・・・・・」
「いやだ、いやだ!、いやだ!!」
ずっと思い出したくなかった。
「・・・私もだよ」
「じゃあここにいろよ!!また戻る必要なんてない!!」
ずっと思い出したかった。
「・・・コーヒー」
「え?」
「これからも砂糖2個・・・だよ」
「なっ、何言ってんだよ!!コーヒーなんてどうでもいい!!」
「よくない!!」
「っつ!!」
「美味しくないコーヒーなんてずっと飲まないで!!いやだよ・・・!!
そんなつらい飲み方・・・ずっとしないで!!」
「っつ!・・・・・・ずっと見てくれてたんだな」
「うん・・・・・・、大樹、私たちの思い出はつらいことだけじゃないよ?」
「うっ・・・!そんなの解ってる!!つらいだけなんて!そんなの・・・
間違ってる」
「・・・ふふっ、また大樹の口ぐせ」
「・・・笑ってるのに・・・泣くなよ」
「間違ってる・・・?」
「間違ってる・・・、でも、間違ってるなずなが好きだ、大好きだ」
「ありがと。私もね、間違ってる大樹が、大好き」
「・・・・・・。ほんとにこっちには戻れないのか」
「うん・・・」
「そっか・・・」
嘘だよ、って、いたずらな笑みで言ってほしかった。
顔が俯き、にじんでぼやけた視界で、カウンターに置いてあるコーヒーがうつる。
「・・・ねえ?大樹」
「ん?」
顔をゆっくり上げ、なずなの顔をみると、そこにはいたずら好きの可愛い笑顔
があった。
気持ちが軽くなる、何度この笑顔に救われたんだろう。
「ほんとならさ。この後、私たち・・・どうなってるか覚えてる?」
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