初めての味

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「……なんですか? セックスして…それで好きにでもなったんですか」 「ふざけないでください。 俺、俺のこと好きって言ってくれる椎名さんに応えたいんです。 それに、好きでもない人とセックスしませんよ」 椎名はそれでも、背を向けたまま。 縁が椎名の体に手を伸ばせば、ベッドは軋んだ音を立て、昨日のことを思い出す。 昨夜はずっと…軋んだ音を出していた。 「…信じて貰えませんか…?」 「………」 「…でも、そうですよね。 ゲイでもない俺が、いきなり好きになりましたなんて言っても、信じて貰える訳ないですよね」 縁は椎名の体から手を離し、ベッドから離れる。 そうすればまた、ベッドは軋んだ音を立てる。 「もう少し。 椎名さんのこと好きか、考えてみます」 これ以上、椎名とこんな話をしても無駄だと感じた。 それに、 俺はまだ椎名さんに同情している。 自分のことを好きだと言ってくれるから、それに応えてやりたい? 綺麗事、だよな。 椎名さんはたぶん、こんな言葉が欲しいんじゃない。 俺の、心からの好きという感情。 「………待って」 「………」 「…怖いだけなんです。 縁さんに捨てられる日が来ることを考えると、怖くて堪らなくなる。それなら、まだ、私のことを好きだと言ってくれない方がいい。 恋人同士なんて関係にならない方がマシ」 「……矛盾だらけですね」 矛盾で溢れている。 俺のことを好きと言っときながら、恋人同士になりたくない? 怖い? 「ふざけんな」 「…え?」 「ふざけんなって言ってんの。 俺のこと好きだって言っときながら、恋人同士は嫌?なに考えてんだよ。 アンタは俺をどうしたいんだよっ」 流石にムカつく。 「……それ…は……―― 私は…」 「…俺のこと、一目惚れだったんだろ? これで幻滅でもして、好きじゃない。やっぱり無理だわって思うんなら、俺と椎名さんの関係はこれで終わり。俺をどうするかは椎名さん次第なんだよ」 「…好きです……―― やっぱり…好きなんですっ。 顔だけじゃないっ。縁さんのこと知って…縁さんのこと、どんどん好きになっていく一方で…―― そしたら…怖くなって……」 「…俺は好きな人を捨てたりしません。 だから、椎名さんは俺とどうなりたいんですか?」 「縁さんと付き合いたいです」
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