距離感

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そして年は明け、縁は佑規と共に日の出の写真を撮り帰宅。 だが、1月1日は終わろうとしていた。 夜の10時に帰宅したのだ。 かれこれ椎名とも、あれ以来会っていない。 連絡も…取っていない。 そろそろ1週間経つ頃だろう。 あけおめメールだけでもしておくべきか、と。 「……」 姉貴は家にはいない。 今家にいるのは縁一人。 恐らく、家に帰っては来ないだろう。 縁はメールを送るのを止め、電話帳を開いた。 椎名さんと携帯画面に映っていて、そこには、椎名の電話番号。 少し戸惑いながらも、通話ボタンを押した。 プルルルルルと鳴る。 2コールぐらいなったが、椎名は出ない。 諦めようと思い、耳元から携帯を離そうとしたとき、 『…もしもし?』 椎名は電話に出た。 「今晩は。 あけましておめでとうございます」 『あけまして…おめでとうございます』 変わらない落ち着いた優しい声。 「………」 でも、あれから一度も会っていないせいか。 どこか気まずい。 一応付き合ってるんだけど、な。 「今から…会いませんか?」 『…今から、ですか?』 「都合が悪いなら、別にいいですけど」 『…いえ、そんなことは……―― 大丈夫です』 「…じゃあ、俺の家来ません? 夜だけど、元旦だから飲食店は混んでますよね」 『……え…――?』 友達を家に誘うノリで、然り気無く誘ったつもりだった。それでも、椎名は沈黙し、しばらく返事は来ない。 あーしまっなぁと内心思う。 やっぱ、まだ早かったか、とか。 抵抗あるよなぁとか。 『…一人暮らし…なんですか?』 「一応姉と住んでます。 でも、今日は俺一人ですよ」 『………それなら…―― 構いません』 家族に会うのは嫌なのか…。 同じ男なんだから、姉貴が見たって友達かぐらいに思うだけだと思うんだけど…――― まぁいいか。 「良かった。 椎名さん、今家ですか?どこ、待ち合わせにします?」 『…今は…友達と会ってました。 どこでも大丈夫ですけど…――』 「え、友達と会ってたんですか? それは…悪いことしました、よね」 『気にしないでください。 …縁さんを優先したいに決まってますから…――』 そ、そうですか…―― 改めてそんなこと言われると照れる。 でも俺は、佑規との約束を優先してしまったから、少し申し訳ない。
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