距離感

5/20
前へ
/75ページ
次へ
「…でもどうして、いきなり家に誘ってくれたんですか?」 「え?」 渡したお茶を椎名は飲んだ後に、そう聞いてきた。 「んー…会いたかった、からじゃないですかね?やっぱり。 それに今日は姉貴がいないから、じゃあ家に呼ぼう!的な」 縁はテーブルに置いてある煙草を取りながら、そう返事をする。 椎名は「ふふ」と小さくだけ笑う。 「…あ、煙草吸っても大丈夫ですか?」 「あ、はい、どうぞ」 そんな椎名の言葉に縁は甘え、煙草を吸う。 最近禁煙したが、失敗した。 まあ結局、疲れたり、緊張したりすると吸いたくなる。 「…縁さんって、煙草吸うんですね」 「まぁ…―― 嫌いですか?」 「いえ、気にしませんよ」 ニコリ、と椎名は優しく笑う。 そんな椎名に苦笑いを縁は返す。 しばらく会話無しに、何を話そうか考えていると、椎名が口を開いた。 「そういえば、縁さんは写真を撮るのがお好き、なんですよね?」 「ん、そだけど。 それが、どうしたんですか?」 「いえ、その…―― どういった写真を撮るのか気になっただけです」 「人に見せれる程凄いものでもないけど、見ますか?」 縁はきちんと椎名の方を向き、そう答えれば、椎名は嬉しそうに首を縦に振った。 そんな仕草が少し可愛らしい。 灰皿に煙草を置き、縁はソファから立ち上がる。 ベランダの近くにある棚に仕舞われている沢山のファイル。その中の1つを取り、縁は椎名にへと手渡した。 椎名はそれを受け取り、中を開く。 縁はソファに座り直し、そのファイルを覗き見る。 そのファイルの中には、沢山の写真がある。 それは全部、縁自身が撮った写真だ。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加