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「景色を撮るのが好きなんですね」
「うん。
だってさ、景色ってすっげぇ綺麗だと思わねぇ?ですか?
なんか、世界は綺麗なんだ!って凄い思うんですよ。1つの景色にしても、見方によったら全然違う。俺、そういうの皆に知ってもらいてぇ」
敬語にならない敬語で縁は、少しだけ興奮したように話す。
ハッとすれば、椎名は呆気に取られたようにしていた。だが、その椎名も直ぐに優しい微笑みを返す。
少しだけ恥ずかしい。
「本当に好きなんですね。
なんか、いいですね、好きなことって」
「椎名さんだって…好きじゃないんですか?カクテル」
「好きです。
でも…自慢できる程の物では、ないでしょう?」
写真を眺めながら椎名は静かに話す。
その口調はどこか寂しげなものがあった。
「自慢とか、関係ないです。
俺だって自慢出来るものじゃない。
こんなの…初めは趣味でしたよ。でも、それが段々、ずっとずっと好きになって、今こうしてる」
「……縁さんは凄いです。
尊敬します」
「そんなっ…尊敬なんて…――」
尊敬される程の人間じゃないのに。
椎名さんの方が、ずっとずっと凄い。
「…俺、カクテル作ってる椎名さんのこと好きです。尊敬します」
「…え?」
「凄いなって思うし、かっこいいなって思うんです。それに、カクテルの種類覚えるのも大変だろうし、それだけじゃなくって、作り方も、カクテル一つ一つの癖とか特徴とか。
全部覚えてるんだろうなって思ったら、やっぱり、凄いなって、そう思うんですよ」
素直に思ったことをそのままに縁は話す。
少し恥ずかしい。
普段、思ったことを素直に他人に話すことはない。
だから、急に恥ずかしくなるものがあった。
でもそれ以上に、椎名さんの方が顔が赤かった。
椎名さんはそわそわと、落ち着きがなく、どう反応をすればいいのか困っているような感じに見える。
「…可愛い」
縁は無意識にもそう言葉をこぼし、椎名に笑顔を浮かべていた。
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