距離感

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「…椎名さん…―――」 優しく唇を重ねてみる。 静かな空間で、感じるのは唇の感触と、椎名の呼吸。 あと、少しだけ風の音。 唇を離せば、少しだけ見つめ合い、縁は椎名から離れ立ち上がる。 「…なんだか、お腹空きました。 椎名さんは、夕飯、食べました?」 「え、え?いえ…まだ……ですけど」 予想外だと言わんばかりの椎名の反応。 縁はそんな椎名の反応にお構い無しで、何事も無かったかのように台所にへと足を向けた。 そして冷蔵庫を開けながら、再び口を開く。 「なんでしたら、俺作れますよ。 簡単なものですけどね」 そう苦笑いを浮かべ、縁は冷蔵庫から、ベーコンとほうれん草。 それと、玉ねぎを取り出した。 「和風パスタとか、どうですか? 俺、結構得意なんですよ」 水道から冷たい水を出し、縁はほうれん草をボールの中に入れ、水に浸からせる。 そうした時、後ろから抱きつかれる。 もちろん、椎名に。 「……焦らしてるんですか…?」 「……」 「縁さん。 意外と意地悪ですね」 甘えた口調。 好きだなぁ、なんて思う。 「ご飯食べた後の方が良くありません?」 だから、なんというか。 苛めたくなる。 「嫌です。 待てませんよ、そんなには」 「えぇ、我が儘だなぁ」 ははは、と笑うようにすれば、椎名は不意を突くように、横からキスをしてきた。 強引に口の中に舌が入ってきて、呼吸がままならなくなる。 「っ、…」 椎名とセックスした時のことを思い出してしまう。 「んっ…ふっ、はぁ……―― 縁さん…」 「がっつきすぎ…―」 ずる、と腰を床にへと落とす。 そうすれば、背中には台所の戸棚が当たり、その戸棚に椎名は手を当てて、再びキスをする。 「…家に誘われた時。 期待しました」 「…期待…――?」 「……縁さんとセックス出来る。 そう思ったんですよ」 相変わらずの大胆発言に縁は言葉を詰まらせ、顔を赤くする。 「…っ、な、俺は…そういうつもりで誘った訳じゃ…――」 そんな縁に柔らかく微笑み、椎名は耳元に唇を持っていき、口を開く。 「でも…期待してましたよね?」 甘い声のせいで、脳の思考が停止してしまう。 そのまま椎名は縁の左耳に舌を這わせる。 「…っ、…」 唾液の音が近くで感じ、それが凄くエロい。
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