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「いやぁ、話には聞いていたが、本当に美人さんだな。確かに母さんの言う通り、若い頃の芹澤瑠璃子にそっくりだ。」
軽トラを運転しながら、関心したように父さんが言う。
真実を知っている僕は、それを言う訳にもいかず乾いた笑いでやり過ごす。
「あんな美人さんと一緒にバイトしてたなんて羨ましいな」
「確かに楽しかったな。色々経験できたし」
馥郁堂での日々を思い返し、僕は言った。
「……ところで、美人さんの餞別ってなんだったの?」
「なんだろうね?ちょっと開けてみようかな」
包装紙を剥がし、箱を開けると小さな茶色い小瓶が姿を現した。
中には液体が入っている。
蓋を開けた瞬間、僕は甘い匂いに溺れた。
血液が沸騰したように胸が詰まって息ができない。
肺の中が甘い猛毒で満たされたようだ。
鼻の奥がツンとして体中の毛穴が痺れる様な感覚が襲う。
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