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「そんなに飲んで大丈夫ですか?」
「平気!平気!明日休みだしぃ。それにぃ~こんな高級なワイン飲まずにいられないよぉ~」
千草さんを呂律が回らないくらいに酔わせるワインは、芹澤瑠璃子の差し入れらしい。
お祝いパーティーをやると聞いて持ってきてくれたそうだが、僕達が未成年だという事はまったく考慮されていない、彼女らしい差し入れだった。
芹澤瑠璃子はあれから時折訪ねて来るらしい。もちろん覗きではなく、ちゃんと会いに来ているそうだ。
二人の親子関係が良好である事を僕は純粋に喜んだ。
「引越し、いつだっけ?」
ふいに馨瑠さんが尋ねてきた。
「来週の土曜。十時くらいには出発するつもり」
「そうか、寂しくなるな」
ぽつりと紡がれた言葉に心が揺れる。
「そうだぁ、馨瑠!見送りに行きなよ~ぅ!私が店番してるからさぁ~」
僕等のやり取りを聞いていた千草さんが、満面の笑みで提案した。
「千草がそう言ってくれるなら、見送りに行こうかな」
馨瑠さんはそう言って僕を見る。
「来てくれたら、嬉しい」
頷きながら僕は返事をした。
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