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結局、なんだかんだ言って夏休みが終わるまで日本に残ることにしたガブリエルは、寮を出てうちに居候中。
客間にふたつの布団を敷いて、ひとつの布団で眠っている。起きると布団どころか、浴衣まではだけてしまっているのだけれど。
「ねーねー、ガブちゃんって凛ちゃんの恋人?」
「はぁっ!?」
朝のダイニングで、コーヒーを淹れてくれた下の妹、遥(はる)の質問にとんでもなく大きな声をあげてしまった。
「違うの?お似合いなのにー。ふたりっともスタイルよくて可愛くて、なんかぴったりって感じじゃない?」
「…遥、面白がってるだろ?」
「えー本気だよ。むしろ積極的にいちゃついて欲しいー。ビジュアル的にすごく萌えるー」
「ぶほっ!!」
思わず口に含んだコーヒーを吹き出しそうになってしまった。
去年の生徒会メンバーの間ではふたりが恋人同士なのは周知の事実なのだけれど、その他の人たちにどう対応するかは全く考えていなかった。
あとでガブリエルに相談しようと思ったけれど、なんだかもう答えが見える。というか、相談の意味さえ理解されない気がする。
どうするのがいいのかなと真剣に答えを探すということもなくぼんやりと考える。
「ほんっと、遥って凛ちゃんが好きだよねー。自慢のお兄ちゃんだよねー」
剣道部の朝練に行くらしい上の妹、爽(そう)がきちんとした制服姿でテーブルにつきながら言う。
爽はもちろん書道部にメインで属しているけれど、『道』とつく部に借り出されることが多く、あちこち顔を出している。
妹たちは中学三年、高校一年と年子で、性格が全く違うのに双子のように仲がいい。
さばさばした爽に対し、遥は『お兄ちゃん』に好意的だ。僕が本家長男として常に特別扱いで育てられたから、ふたりの妹たちと仲は悪くないけれど見えない溝がある。
遥が僕のことを、かっこいい、可愛い、アイドルみたいと臆面もなく目の前で言うのも、ある意味兄妹として距離感があるからだと思う。
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