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「君、僕と同じ力を持っているんだね」
「え?」
彼との出会いは、本当に偶然だった。
つまらない高校生活も一年も経てば慣れてくる、そんなある日のことだった。
「君はその能力が嫌いなんだね」
「っ、……!」
ーー何こいつ!
「君の能力を最大限生かせる仕事があるんだけど、興味ない?」
彼はとても怪しかった。
けれど、その言葉はとても魅力的で。
私は彼の話を聞くだけでも聞いてみることにした。
「……貴方がやったんですね?」
「ーーっ!!」
「会社のお金は……あぁ、キャバクラで全部使っちゃったんですかぁ」
私は目の前にある大きな水晶玉に手をかざして覗きこむ。
もちろん、水晶玉の中には何も映ってなどいない。
そんな私を沢山の男達が取り囲んでいる。
私が指差した男以外は。
「あー、かなり前からやってらっしゃるようですねぇ」
私の言葉に、男は固まって口をパクパクさせている。
「本当にあいつが?」
「えぇ、彼の会社の引き出しの一番上を確認してください。そこに、彼の通帳と印鑑があります」
私はそう言って立ち上がった。
私の仕事はここまで。あまり深入りするとろくなことにならない。
水晶玉を鞄にしまい、男の人達の間を縫うようにして入り口の扉にたどり着く。
「では、確認がとれましたらご連絡ください。振込などは後日お願いいたします」
それだけ言い残して、その部屋をあとにした。
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