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 確認すると荷物入れから取り出した白くて薄い簡易俎板を膝に乗せ、同様に取り出した果物ナイフで二十世紀の皮を器用に剥く。  簡易俎板を持って行くようにアドバイスしたのは、おそらく智美だろう。 「智ちゃんがね、持って行けって言うから持ってきたけど役に立ったわね。で、フォークとかはあるの」 「ない」 「じゃ、爪楊枝を出して」  母が智美に向かって言う。  智美はわたしの六歳下だ。  小学校通学分丸々、年が離れている。 「お姉ちゃん、大丈夫なの」  妹が爪楊枝を母の物入れから捜し出し、母に渡しつつ質問する。 「命に別状はないからね。身体中が痛いけど」 「はい、これ」  と母が爪楊枝に刺した二十世紀の小ピースをわたしに差し出す。  だが、わたしが伸ばした右手にも包帯が巻かれているのに気づき、 「痛痛しいわね。ホラ、口を開けて、アーン」 「赤ちゃんじゃないから」  と抗議はするが口は開ける。  母が二十世紀の小ピースを入れ、爪楊枝を抜く。 「どう」 「フガフガ。まだ食べていないわよ」 「ああ、そう。じゃ、次は智美の分。はい」 「ありがとう」と智美。  爪楊枝は使わず、直接指でピース(大)を掴む。 「そういえば智美、今日仕事は」 「何言ってんのお姉ちゃん、今日は土曜日だよ。頭、可笑しくない」  するとすかさず、 「コレ」  と母が窘める。 「ヘンなこと言わないで」  だからわたしは内心では母がわたしのことをかなり心配しているだろうと気づいてしまう。  けれども母の方は自分がわたしに嫌われていることに気がつかない。  何年間もずっと。  わたしが母を客観的に眺めるようになってからずっと。  もちろんその感情は敵意に至るまで成長しない。  何故なら、そうなる前にわたしが家を出たからだ。 「そういえば昨日の夜、お父さんが来たんだって」と母。 「だって、この病院のこと会社に連絡したのはお母さんでしょう。今日は出張だから会社の帰りに寄ったんだって。ウチから来るより近いんだってさ」 「夜の十一時近くに良く入れてくれたわね」 「その辺りは何とでも説明するでしょ」 「ところでアンタお金はあるの」 「とりあえずは。それに、まだ交渉してないけど保険が利くでしょ」 「ああ。でもそれにしても大変ね、災難ね。恐ろしいわね」 「お母さんも気をつけてよ。傷害犯に老若男女はないはずだから」
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