No.7 [2015/12/29]

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----- 2015/12/22 -------------------- 「マコト!たまねぎ食べなさい!」 母子のみの食卓で、母は息子にたまねぎを食べさせようとしている。 「やだよ、息が臭くなるじゃん」 もーもーと牛のような声と鼻息で母は赤くなっている。 母はおもむろに皿に残った焦げ気味のたまねぎをつかんだ。 「これが親子の絆なの!たまねぎなの!」 マコトのアゴをつかみ、たまねぎを押し込む母。 手足を机にぶつけ、抵抗の意志を表現するマコトだったが 力で押し切られた。 口の中に押し込まれたたまねぎは歯ですり潰され わずかな甘みと苦味、そして繊維がちぎれるような感触をマコトに与えた。 親子の絆はマコトには馴染まなかった。 ----- 2015/12/23 -------------------- いや、違うんだ、こういう出会いは求めてない。 頭が痛い。 僕は旅館で働いている一人娘の女の子とアッと運命的でロマン溢れる出会いをするためにこの島に来たんだよ。 今、船着場で、物理的な頭の痛さによって頭を抱えている僕の目の前にいる女。 ツナギ姿でピンク色のツインテールの、がさつそうな女。 こいつがだ。 頭にイカリを乗せて近づいてきたんだ。 イカリっていうのは船を留めておく重たいアレだよ。 おっとっととか言いながら頭のイカリをこっちに倒してきた。 僕の頭がキラウエア火山よろしく血の大噴火を起こしたわけだ。 なぜだ、なぜ頭にイカリを乗せる、頭が痛い、なんだこのイカリは。 黒くざらついた表面のイカリに赤字で文字が書いてある。 <よろしくまる> よろしくまる・・・、明日乗る予定の船じゃないか・・・
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