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「ね、ちょっとだけブラウス引いてください。チラ見でいいから」 こうすればいいとばかりに、猪瀬はネクタイを外した自分のワイシャツの胸元を引っ張る。 「なんで、そこまで……」 自慢じゃないが、私の胸はだいぶ小振りである。 しかも、三十路。 社内と言わず課内にだって、もっと素晴らしいバストをお持ちの方々がいらっしゃるし、猪瀬だったら彼女の一人や二人いるだろう。 何も私じゃなくても、と思うのだ。 どうしても気になるほどブラが可愛かったにせよ、怖くて煩くて毎日顔を合わせなくちゃいけない先輩社員の私に頼むことではない。 「……じゃあ、黎子さん……これ聞いたら同情してくれます?」
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