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「黎子さん、今日は……ベージュでしょ」 プツンと小さな音がした気がした。 間違いない。 私の頭の血管が切れた音だ。 「……いーのーせーっ、いい加減に、しろっ」 できる限り低い声でゆーっくり言ってやると、猪瀬は殊勝な振りして謝った。 ベージュは言っちゃダメだろ、ベージュは。 今日の私は、マニッシュなライトグレーのスーツ。 これを着る日のインナーは、薄手の白Tシャツが定番。 こんなに暑い日に、こんなに薄いTシャツを着てるんだよ。 中身は可愛げより機能性重視のモールドで、色は無難なモカだってことくらい分かるだろ! なんで分かんないの? 女だったら、大体想像つくよね。 いや、男なのか。 久々に猪瀬が男だということを思い出して、クラリとする。
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