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貸切にしていた居酒屋の座敷のテーブルの上は、すっかり片付けられている。 だだっ広い座敷の壁に、私はダラリと体をもたせかけ、猪瀬はそれを真横からじっと見つめていたようだ。 「ごめん、猪瀬。飲み過ぎた」 「いつも面倒見てもらってますから、これくらい、なんてことないです」 猪瀬の言った通り、仕事でも酒の席でも彼の面倒を見るのは私と決まっている。 指導係なんて役割は入社一年目だけなのに、習慣とは恐ろしいものである。 一方の私は、社内の飲み会で酒量を誤ることは今までなかったから、こんなふうに介抱されるなんて初めてのことだ。 それも、いつもは世話してる立場の猪瀬になんて。
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