第1章

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「ねえ婆や、今日もあの人は来ないのかしら。」 「そのようでございますね。お嬢様。」 「もう、読み終わってしまうわ。」 「そうでございますね。」 「この栞、あの人の香りがするの。」 「左様でございますか。」 「小説の続きなんて、出来てなくても良いから会いに来てくれないかしら。」 「それは、お父様がお許しになりませんよ。」 「そうね。婆や、もういいわ。外してくれない?」 「わかりました。奥の部屋におりますので、何かありましたら、お呼びつけ下さい。」 「わかったわ。」 一眠りしようと、本を閉じた雪乃は、背表紙に小さな文字を見つけた。 -愛しています。雪の夜お迎えにあがります。- 今宵は猛吹雪、それでもあの人は来てくれるのだろうか。
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