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「ねえ婆や、今日もあの人は来ないのかしら。」
「そのようでございますね。お嬢様。」
「もう、読み終わってしまうわ。」
「そうでございますね。」
「この栞、あの人の香りがするの。」
「左様でございますか。」
「小説の続きなんて、出来てなくても良いから会いに来てくれないかしら。」
「それは、お父様がお許しになりませんよ。」
「そうね。婆や、もういいわ。外してくれない?」
「わかりました。奥の部屋におりますので、何かありましたら、お呼びつけ下さい。」
「わかったわ。」
一眠りしようと、本を閉じた雪乃は、背表紙に小さな文字を見つけた。
-愛しています。雪の夜お迎えにあがります。-
今宵は猛吹雪、それでもあの人は来てくれるのだろうか。
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