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神社に戻り、身を清め、私はまた巫女の装束に着替えた、いつもの白衣に千早を羽織り、緋色の袴では無く、今だけは黒袴だ。
気を鎮め、いざ本殿に進む。
神座の前に一人の少女が佇んでいた、あゆみちゃんだ。
「お待たせしました」
「あ、のり、お姉ちゃん」
ありがとうあゆみちゃん、見惚れた彼女の心の声が聴こえて、私は少し照れながら微笑んだ。
「これから私が神様に、舞を捧げます、その後、あゆみちゃんが神様にお願い事をしてね」
「はい」
彼女はにっこり微笑んだ。
巫女の舞を始めた。
奉納の儀式に要する清めの舞だ、幼少の頃から習っているが、元来、形などは無いそうだ、要は気持ちなのだと母は言っていた。
でも、美しく踊る母を、私は憧れに思っていた、今、私は母の様に美しく踊れているのだろうか。
「ありがとうございました」
深々と頭を下げて、終演とする。
「これより、願い事の奉納を始めます」
あゆみちゃんの緊張が伝わる。
「さあ、あゆみちゃん、神様にお願い事を言って下さい」
私は微笑んで言った。
「はい」
あゆみちゃんが喉を鳴らす。
「か、神様、お願いします、鳥さん達を戻して下さい」
聴こうとしなくても心が伝わってきた、彼女は鳥の声が大好きなのだ、きっと彼女にしか聴こえない、鳥の声、唄がたまらなく好きなのだ。
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