美しい願い

11/11
前へ
/11ページ
次へ
「お願いします、またいつもと同じ毎日に鳥の唄を、私は聴きたいっ」 これが彼女の願い、美しい願いだ。 「ここに、美しき願い事、をお納め奉り致します」 その時、パアアアーンっと大きな音が聞こえた気がした。 あゆみちゃんが辺りを見回すが何も変化は無い、だけど私の方は心が読める力が無くなった、願いを奉納したからだ。 「あ、聞こえる」 あゆみちゃんが何かに気づき慌てて外へ行こうとした。 「鳥の唄が聴こえる」 そう言ったので、私も慌てて外へ出た。 「チチチッチチチチチッ」 雀だった、鳥が戻ってきたのだ。 空を見上げれはまだ無数の鳥が羽ばたいていたが、宛もなくただ飛び回っている様子だった。 「鳥だ、鳥達が戻ってきてくれたんだ」 嬉しそうに笑う、あゆみちゃんの心はきっと喜びに満ちているのだろう。 「良かったね、あゆみちゃん」 「うん、ありがとう、のりお姉ちゃん」 大陸からの悪しき風、未曾有の危機も避けたのだろうか、詳しい所は分からないが、鳥はまた空を飛び回り、唄う。 「鳥さんも帰ってきたかな」 それも分からないが、多分初めての大空を充分楽しんだら、きっとまたあゆみちゃんの元に戻ってくるよ、いつか必ず。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加