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心を澄ますイメージで集中する。
「あの子だ」
小学生低学年位の女の子が熱心に参拝している、親御さんの姿は無い。
「お嬢ちゃん、一人で来てるの」
私はその女の子がお祈りを済ませて帰る途中に声をかけた、境内で巫女の姿なら不振がる事も無いだろうが、しゃがんで目線を合わせ、優しく微笑んで訊ねた。
「うん、一人」
彼女の感情が口に出さずとも聴こえてくる、少しびっくりさせたが、怯えも警戒も無い。
「熱心にお祈りしてましたね、もし良かったらお姉ちゃんにどんなお願い事をしたのか教えてくれませんか、お姉ちゃん巫女だから、願い事、神様に伝えてあげる」
彼女は笑って応えた。
「うん」
暖かい安心した感情と強い厳しい思いを感じた、言葉にならない思いも心なら詳しく聴こえる、感じる事が出来る。
「鳥さんがいなくならないようにって言ったの」
その女の子の願い事の内容に触れると現状の厳しさと強い哀しみを感じた、鳥が死んでゆく、とは?そこまで心が見てとれた。
「鳥さん、お嬢ちゃんの飼っている鳥かな?病気になったの」
少女は首を振った。
「ううん、隣の家に住んでるの、大きな鳥さん」
少女のイメージは、鳥だ本当に大きな鳥がいる、そして無数の小鳥の死骸。
私は心を読んでいる事を気付かれ無いように、もう一度質問した。
「もし病気だったら大変だね、お母さんやお父さんに相談した?」
「ううん」
少女はまた首を振って応えた。
心を読んだ私は驚いた、小鳥の死について少女は口止めされていたのだ、大きな鳥に。
少女が躊躇いがちに語りだした。
「あのね、大人に言っちゃダメなの」
少女に恐怖心が芽生えた、でもこれは口止めの弾圧ではなく、鳥達の死に対しての恐怖だ。
「大丈夫、私は神様に伝えるだけだから、大人の人には絶体言わないわ」
私が微笑み少女の手を取って訊ねた。
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