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《さあアユミよ、窓を開けておくれ、私はもう行かなくてはならない》
ゆっくりとあゆみちゃんが窓に近付く、躊躇ってカーテンを開けると、差し込んだ日差しが埃の道を作った、青空へ続く道を。
鍵を外し窓を開けると、新鮮な風が古い部屋の空気を掻き出す。
《ありがとう、さようならアユミ、そして神力を持つ人間の娘よ、後の事を頼む》
あゆみちゃんと二人寄り添って、鷲の旅立ちを見守る。
「はい」
大きな翼を窓枠いっぱいに広げて、鷲は飛び立った、大きなシルエットが途端に青空に吸い込まれて行く。
すると、その後を追うように、この屋敷に居た無数の鳥達が一斉に飛び立った。
いや、窓から見渡す限り周辺にいた全ての鳥が後を追って行く。
「クワーッアアアッ」
大きな鳴き声を聞いた、鷲の声だ。
「皆行っちゃうんだ」
私達は屋敷の外に出た。
驚いた、まるで煙のような鳥の群れが空のあちこちから立ち上っているではないか、この街の、いやこの国の全ての鳥が皆、北を目指して飛んで行く、その先頭にはあの鷲が居るのだろう。
「鳥さん、鳥さーん」
あゆみちゃんの悲しみと切なさが伝わる。
いつまでも続く鳥のラインを見上げながら、私は言った。
「さあ、あゆみちゃん、今度は私の番、お手伝いをお願いします」
なんの事と、疑問を口に出す前に私は応えた。
「鳥さんの頼まれ事をやっちゃいましょう」
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