2人が本棚に入れています
本棚に追加
子供の頃から、父にきつく言い聞かされていた。
「絶対、養子に行ってはならん。名前を継げ。さもなくば。」
父はいつもここで、話すのを止めてしまう。
どうなるの?
と、幼い頃、尋ねたことがある。その時、父は青ざめた顔で言った。
「死ぬ…死ぬんだよ」
父の表情に恐ろさを感じ、その日、父と約束を交わした。
中学生になったばかりの夏休み、田舎に帰省した際、
眉間に頑固さを刻み込んだような祖父が、僕に同じことを言った。
祖父は、17 歳で戦争を経験し、次々と武勲を上げ、仲間に戦場の鬼と呼ばれていた男だ。
そんな肝の座った祖父が、真面目な顔をして呪いを信じている姿に、
僕は戸惑いを隠せなかった。
それからしばらくして、ある事実を知った。
父の兄、つまり、僕の叔父さんが、23歳の時、
祖父の言いつけを守らず、養子に行ってしまったらしい。
一ヶ月後、父の目の前でトラックの後輪に敷かれ、帰らぬ人となった。
この事がきっかけとなり、父も祖父も、家代々の呪いの非情さを噛み締めたようだ。
最初のコメントを投稿しよう!