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ハッとしたマツオは、自宅のベッドで目覚めた。
また夢か。
夢だからどこも痛くはない。
夢の中でも現実を味わうことにひどい絶望感じながら、いつものように家を出た。
駅についてみると、電車遅延で混雑しているという。
隣の駅での事故。
おかしいな、とマツオは思った。
こんな状況が前にもあったような、デジャヴというやつか。
人身事故は珍しいことではない、マツオはいつものように出社した。
昼休み、また競馬の大当たりの話をしているやつがいた。
夢で聞いたのと同じ馬が勝ったらしい。
マツオはあまり深くは考えず、しかし思考は頭の奥底でぐるぐると巡っていた。
太陽は沈み。
駅のホーム。
夢と同じ出来事、どうでもいい毎日、仕事はしたくない、家に帰りたくない、ぼんやりとマツオは考えた。
マツオは、電車に飛び込んだ。
ハッとしたマツオは、自宅のベッドで目覚めた。
勢いのまま、曜日を確認した。
月曜日。
これは夢ではない、「戻っている」に違いないと確信した。
それと同時に深い絶望が襲った。
マツオは独りに飽きている仕事に飽きている生きるのに飽きている。
それから脱出するのすら許されないのかと。
憤りや怒りはない、そんな気持ちはとうに消火されてしまった。
戻っている、ということについてぼんやり考えていると
いつの間にか出社時間は過ぎていた。
マツオは何となく会社をサボった。
会社から何度か電話があったが怒られるのだろうと思うと取る気は起こらなかった。
サボってもとくにやることはなかった。
昼過ぎ、マツオはスーツに着替え、駅の改札近くにやってきていた。
平日の昼間に駅付近を見るのはひさしぶりだった。
買い物にきているらしい母と子が目に入った。
子どもが特撮ヒーローのビニール人形をもっている、大切なものなんだろう。
マツオは、昔ヒーローになりたかったことを、ぼんやりと考えた。
そのまま改札から駅のホームへ向かい、
電車に飛び込んだ。
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