緋碧ノ娘

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城の門の扉が開かれる音がした。 多くの馬の走る大きな音と、響く大きな声に国中が驚く。 「国王が動き出したのね…。 私を捕らえる為に緋碧宮に向かっているんだわ」 城の螺旋階段の壁に背をつけ、窓から走る馬と兵達の背を見る。 「…行こう、君の話してくれた風景、きっと地下だ!」 王子が離れてゆく兵達の姿を見つめ、娘の手をぎゅっと握り、手を引いて階段を駆け下りてゆく。 外からは夜中であるが、人々のざわめく声が聞こえ始めていた。 * 城の地下には数人の臣下達が捕らえられていた。 全て、王子と親密な関係であったり、王子を影ながら支えてきた者達だった。 王子が目を見開く。 王子の言っていた行方不明になっていた臣下達は、王によって地下牢で捕らえられていたのだった。 娘が王子を見上げる。 裏でこんなことが起こっているのを知らなかったから、王子はとても傷ついたような、驚いた表情をしていた。 牢屋の鍵は閉まっていたが、王子は「コレは王族しか知らない隠し開け方だ」、と言って、あっさり牢屋を空けてしまった。 余程臣下を信頼しているのも見て分かったし、余程大切になさっているのも見て分かった。 とても、必死そうだったから。 「早急に兵を集め、事態を伝えよ! 緋碧宮へ向かった兵達も追い、捕らえよ! 国を、アカーナ神様の教えを守る為に!!」 王子の声が鋭い眼差しと共に臣下にかかる。 助けられた臣下達は散り散りに己の成すべきことの為に走り、国を守る構えを見せた。 「私も、成すべきことをします」 静けさが伝う地下牢で、娘がそう静かに澄んだ声で言うと、王子は驚いた表情で娘を見る。 酷く心配した心が見えた。 娘は安心させるように、王子に首をかしげ強く微笑みかける。 そしてアカーナ神の剣を携え、地下廊から上へ上がる階段へと足をかけた。 *
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