緋碧ノ娘

2/12
前へ
/12ページ
次へ
…まだコノ国が無く、島が陸続きだった頃のこと。 鬼のような姿と妖しい力を持つ民達が我らの祖先を追い回し、捕らえようとしていた。 ソレを哀れに想った女神──アカーナ神は、陸続きだった半島の体内から剣を取り出し、ソノ剣で半島と大陸を繋ぐ道を叩き切った。 これにより、大陸と半島を繋ぐ道と海は叩き切られ、海には大きな歪みが出来、大陸には妖しげな力を持った民だけが残され、我らの祖先は命の危機から逃れることができ、平穏な日々を約束された。 喜ぶ我らの祖先に、アカーナ神は仰った。 「私はココに剣を立て、ココに新たな国を創る。 剣と共に私を祀りなさい。 私はアナタ達の行く末が平穏であるように祈りましょう。 ソコではいかなることがあろうとも、人を差別することを禁ずる。 破ればたちまちこの国は滅びるでしょう」 そうしてコノ国は生まれ、国の至るところにアカーナ神の着ていた服の色が使われ、いつしかコノ国は、"緋碧(ひへき)ノ国”と称されるようになった。 日の光が溢れる平穏な国と…。 * 天界で、一人涙を流し俯く娘が居た。 ソノ娘は女神──アカーナ神の唯一の愛娘──アカーナシャルだった。 彼女は悲しげに歌い、泣き、悲しみに身を包む。 娘を哀れに想った女神は娘に理由を問う。 …娘の口から出たソレは、痛い程の強い想いだった。 女神は娘にひとつ、命(めい)を下す。 「貴女の願いを叶えてあげましょう。 …ソノ為には、貴女には人間の世界で成さなければならないことが在る…」 女神のソノ言葉に、強く意思を告げ、返事を返すアカーナシャル。 「例えどんなに大きなことがコノ身に起きようとも…、コノ願いが叶うならば、私は何も恐れません」 ソレはとても強く、真っ直ぐな眼差しで。 女神により与えられた命と決意を胸に、娘は人間の世界へと旅立った。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加