僕の願い

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「彼はあなたに隠しているようですがひどい飲酒癖があります。 それだけではありません。 彼は酒に酔うと周囲へ暴力をふらずにはいられない酒乱なのです。 そしてアルコールを理由にしたDV…ああ、いまの時代はこの言葉はまだないですね。 パートナーによる暴力行為です。彼にはその性癖があるのです。 田舎は都会よりも暴力や犯罪が隠匿されやすいのです。過度に好奇の目にさらされるため被害者の立場が守られておらず、加害者よりも噂のネタにされます。そしてそれを『恥だ』と教え込まれるのです。残念ながら、これは何十年たったいまでも変わっていません」 「あの、何を言っているんですか」 さすがに彼女の顔が露骨に不審の色を募らせていく。しかし僕はかまわず続ける。 「DV男、いや暴力男の特徴は立場の弱い人には横柄で、プライドが高いので何が何でも謝りません。 相手を見下しているのがバレないように常に笑顔です。そして束縛が激しい。中には親との関係がうまくいっていない人もいます。 じいちゃん、いえ、大野トビオの父親と会ったことはありますよね。 そのときにもこれらが当てはまると思いませんでしたか。僕は遺伝だと思いました」 「ちょっと待ってください。あなた、何を…」 「大野トビオの場合、あなたとの結婚が目的のであるため飲酒癖を隠しています。彼は自分が酒乱であるのは自覚しています。 事実、彼は学生時代に飲食店で酔って暴れて店員の肋骨を折ったという過去があります。 代議士である親が金でもみ消したと、何年もたったあとに本人がまるで武勇伝でも語るように自慢していました。調べてみればわかることです。 店の名前は『青木屋』。絶対にあなたをつれて入ったことがないはずです」 中川春子ははっとした表情を見せた。 身に覚えがあるのだろう。 それでも真面目な彼女だ。 大野トビオに恋をしている、いや、うつつを抜かしているからこそ彼女は反撃に出た。 キッとなって彼女は真正面から僕を睨みつける。 「何を証拠にでたらめを言うんですか。彼は絶対にそんなことをする人ではありません。 トビオさんはまじめで優しくて紳士的で男らしい素晴らしい人です。 誰かに私とトビオさんの仲を裂いてほしいと頼まれたんですか。これ以上彼のことを悪く言ったら大声で人を呼びますよ」 「じゃあ、『青木屋』へ言って店員さんたちに尋ねれば! あいつの名前を出しただけでみんな凍りつくから!」
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