第一章 黒腕の剣銃士

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   黒髪の男は通話が終わるとホードをカーゴパンツのポケットへとつっこみ、念の為にフライドの首に指を当て脈がないことを確認すると、来た道を戻ろうと路地へ向けて歩を進める。 「ま、待って下さい」  少女が白髪の女から離れ黒髪の男へと駆け寄り、一定の距離を保ち警戒をしながらも呼び止めた。  無言で振り向いた黒髪の男は眼帯のせいか人相が悪い。少女は怯えながらも、白髪の女を指差しながら自分を庇い怪我をしたこと、立てそうにないことを一生懸命に伝えた。 「お願いします。私はどうなってもいいので、お姉さんだけは!」  黒髪の男は困ったように頭をポリポリと掻き、ハァと溜息を吐くと「分かった」とだけ返し、白髪の女の元へと歩いて行き、女の前でゆっくりと屈み傷を確認していく。 「肩と腕は大丈夫そうだな」  それだけ言うと腰にあるレザーシースからナイフを抜き、ワンピースの下に履いているタイツを裂いていき傷の確認をするが、苦虫を噛み潰したような表情になる。  少女はその変化を見逃さなかった。 「お兄さん、大丈夫じゃないの?」 「あぁ。出来るだけ早く病院に運びたい」  白髪の女は相変わらず無表情でぼぅと傷を眺め、少女は不安そうに黒髪の男の顔を見る。男はその視線に気が付き、弱ったといった表情を見せる。 「お兄さんは止せ」 「え?」 「クラウスだ。短い付き合いだとは思うが、俺が運ぼう」  クラウスと名乗る男は白髪の女を肩に担ぐ。少女は安心したようにその場にぺたりと座り込む。クラウスは大人しく肩に担がれた女を運ぼうと路地に入る際に、ふと後ろを向くと広場の中心で座り込む少女を見つける。 「おい。行くぞ」 「え?」  少女はポカンとした顔でクラウスを見る。 「お前がいないとこの女の名前も分からなければ、こいつを看病する奴もいないんだが?」  初めは意味が分からないといった表情の少女に笑顔を宿る。必要にされていると思ったのだろうか、真意は分からないがクラウスの元へと駆けていく。
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