6人が本棚に入れています
本棚に追加
黒髪の男は通話が終わるとホードをカーゴパンツのポケットへとつっこみ、念の為にフライドの首に指を当て脈がないことを確認すると、来た道を戻ろうと路地へ向けて歩を進める。
「ま、待って下さい」
少女が白髪の女から離れ黒髪の男へと駆け寄り、一定の距離を保ち警戒をしながらも呼び止めた。
無言で振り向いた黒髪の男は眼帯のせいか人相が悪い。少女は怯えながらも、白髪の女を指差しながら自分を庇い怪我をしたこと、立てそうにないことを一生懸命に伝えた。
「お願いします。私はどうなってもいいので、お姉さんだけは!」
黒髪の男は困ったように頭をポリポリと掻き、ハァと溜息を吐くと「分かった」とだけ返し、白髪の女の元へと歩いて行き、女の前でゆっくりと屈み傷を確認していく。
「肩と腕は大丈夫そうだな」
それだけ言うと腰にあるレザーシースからナイフを抜き、ワンピースの下に履いているタイツを裂いていき傷の確認をするが、苦虫を噛み潰したような表情になる。
少女はその変化を見逃さなかった。
「お兄さん、大丈夫じゃないの?」
「あぁ。出来るだけ早く病院に運びたい」
白髪の女は相変わらず無表情でぼぅと傷を眺め、少女は不安そうに黒髪の男の顔を見る。男はその視線に気が付き、弱ったといった表情を見せる。
「お兄さんは止せ」
「え?」
「クラウスだ。短い付き合いだとは思うが、俺が運ぼう」
クラウスと名乗る男は白髪の女を肩に担ぐ。少女は安心したようにその場にぺたりと座り込む。クラウスは大人しく肩に担がれた女を運ぼうと路地に入る際に、ふと後ろを向くと広場の中心で座り込む少女を見つける。
「おい。行くぞ」
「え?」
少女はポカンとした顔でクラウスを見る。
「お前がいないとこの女の名前も分からなければ、こいつを看病する奴もいないんだが?」
初めは意味が分からないといった表情の少女に笑顔を宿る。必要にされていると思ったのだろうか、真意は分からないがクラウスの元へと駆けていく。
最初のコメントを投稿しよう!