第一章 黒腕の剣銃士

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   少女はフィーネという白髪の女の治療を終わるのを待ちたいという思いと、一度自分の家に戻り無事を両親に伝えたいという思いがぶつかり合うが、そもそもここの路地を女子供だけで歩きたくないといった感情が混ざりあった結果、クラウスの後を追ってフィーネの元を後にした。 「クラウスさん! 待ってよ」  少女は再びクラウスの後ろにピッタリとくっつき歩き出す。クラウスはそのことに違和感を覚え立ち止まる。 「お前の姉さん、置いてきて良いのか?」  少女はその質問の意味を理解していない様子だったが、昨日会ったばかりで助けてくれた人だと伝えるとクラウスは困ったように空を仰ぐ。 「お前――」 「セリアって呼んで。お前って名前じゃない」  少し怒ったようにも見えるセリアと名乗る少女。これでお互いの名前が知れたのは良かったのだが、クラウスの様子が少しおかしい。真っ黒な右手で口元を抑えセリアと眼を合わせようとしない。ただただ静寂な時間が過ぎる。  セリアは何か不味かっただろうと心配そうにクラウスを表情を伺う。 「クラウスさん? 大丈夫?」 「い、いや。 今夜の宿をどうするか考えててな」  クラウスは少し慌てるように、そしてどこか安心したようにセリアに背を向け歩き出す。その言葉を聞いたセリアは嬉しそうにクラウスの目の前に回り込む。 「宿なら任せて! お父さんとお母さんが宿屋なの」  その言葉にクラウスは驚きの後に安堵の表情を見せた。この土地に住む子だということが、分かったのが一番大きな理由だった。  ここからはセリアが先頭を歩き、少し後ろをクラウスが着いて行く。ブラックマーケット街を抜け、街のメインストリートに出ると、薄暗くなってきたにも関わらず地元民や旅人で溢れ返り、活気溢れる中心街へとやって来た。  セリアが立ち止まった店の看板には“洞穴のうさぎ”と書かれ、四階建ての宿屋だった。 木造建てで周囲の建物と比べると立派とはお世辞でも言えないが、手入れは丁寧にされており、周囲にある建物にも引けを取らない存在感を醸し出す。  セリアが木製の扉を開けるや否や、カウンター前にいたであろう中年の女性がセリアに覆いかぶさるように抱きつく。 「セリア! どこに行ってたの!? お父さんもお母さんも心配したのよ!?」  大人気もなく涙と鼻水を垂らす女性と共にセリアも安心したのか、崩れ落ち泣きじゃくる。
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