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「二日滞在するなら、一個だけお願い聞いて欲しいの」
セリアは途端に真面目な表情に変わり、小さく身を乗り出す。クラウスは正直面倒事は避けたかったが、特にやることもなく二日間の滞在は弾の補充や簡単な食料の補充、あとは情報収集といった事に当てる予定しかなかった。
「話は食べながらでも聞こうか」
同時に空腹感を得ていたクラウスが提案すると、丸一日以上空腹だったセリアもベットから降りるとクラウスの手を引いて部屋を後にした。
食堂は地下にあるらしく、地下に入るや否や食欲をそそる香りが漂う。他にも宿泊者が居るのか食堂は多くの人で賑わっていた。
朝食、昼食、夕食と日替わりでそれぞれのメニューが変わるシステムらしく今日のメニューは暴れ牛と呼ばれる魔物、タンターの肉を使ったビーフシチューとシルフィ手作りの焼きたてのバターロールパン。飲み物はセルフで酒やジュースまで選び放題だ。
シルフィやリンドも、セリアと一緒にいるクラウスに対する対応も冷静になっており、一言二言交わす程度でビーフシチューとバターロールパンをトレーで受け取ると、セリアと共に空いている席を見つけ腰を下ろす。
食事に手を付ける前にクラウスは話を聞いてしまおうとセリアに問いかける。
「それで、お願いとは?」
「あ、あのね。明日お姉さんを迎えに行きたいの」
クラウスは迎えに行けばいい。と返したくなる手前、丸腰でましてや年端のいかない女の子が一人でブラックマーケット街に足を踏み入れるのは、普通は考えられないことであり危険なことも分かっていた。
何かあれば、次こそはセリアは帰ってこれないだろう。
「分かった」
半日程も共に過ごしては居ないが、知り合ってしまえば簡単に女子供を見捨てられるほど淡泊でもない男のようだ。短いが了解をし、食事に手を付けたクラウスの様子を見たセリアは嬉しそうに微笑み感謝を述べる。
基本的に一人旅を続けてきたクラウスにとっても誰かと一緒に食事を取る機会もなかった為か、食堂に人がほとんど居なくなった頃にクラウスとセリアは食べ終わり、ロビーで別れるとセリアは両親の元へと、クラウスは三階の自室へと戻った。
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