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クラウスは自室に戻るとホルスターから抜き取ったハンドガン、スプリングを慣れた手付きで分解していきライフリングが彫られたバレルの中にボアクリーナをかけ放置する間に、腰のレザーシースから抜いたナイフの刃を防腐油を塗布した布で丁寧に拭き上げた。
部屋に常備されているインスタントコーヒーを作り一口飲むと、机の上に転がるバレルを手に取り、銅ブラシを装着したクリーニングロッドで中を磨きあげ、汚れが無いとこを確認するとナイフと同じように防腐油でバレル内を拭き上げ、インジェクターの清掃をも終える。
「こんなもんか」
銃身の清掃だけだったが機関部もざっと確認する程度で、素早く組み立てると弾の補填を完了させたマガジンを装着させる。
ナイフはレザーシースに刃を納めると、スプリングと共にベッドの頭元に置いていく。
カップに入ったコーヒーを飲み干すと、窓を開け夜風に当たり煙草に火を付けゆったりとした時間を過ごし、火を消し窓を閉めカーテンを閉め切ると、灰色のシャツを脱ぐ。
腹部には白い包帯が何重にも巻き付けられており、無理矢理繋げられたように見える右肩から先は真っ黒な金属でも皮膚でもない不思議な表皮の腕。
眼帯は取ることをせずにベッドの上に横たわると、そのまま糸が切れたかのように深い眠りへと落ちた。
朝陽が上がり始めの薄暗い明け方。クラウスのカーゴパンツのサイドポケットからホードの着信音が部屋に鳴り響く。
流石に起きたクラウスは不機嫌そうにホードを取出し、耳に当てる。
「…………はい」
クラウスの不機嫌そうな声に反応する相手は女性だった。
「おはよう。貴様なら起きているかと思ってな。私の勘は正しかったようだな」
クラウスはベッドから起き上がりカーテンを少し開くが電話を掛けるにはおかしいほどの早朝っぷりなことに気が付く。
「こんな時間に……要件は?」
こんな時間とはなんだ。もう朝だぞ。等の罵声が飛ぶがクラウスは当然のように無視する。
「まぁ、貴様は話が早くて助かる。異能を持つ女が見つかったのだ。至急捜索し本部へ連れてくるようにとの事だ」
クラウスは特に驚く事もなく話を聞く。クラウスの黒い右腕も一種の異能持ちとしての認識をされているからだ。
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