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この日の朝食はべッセと呼ばれる魔物の怪鳥の肉を使った野菜との炒め物とべッセの卵を使ったスープ、後はシルフィの焼いたクロワッサンだった。
まだ時間が早いおかげか人は少なく食堂にはポツリポツリと人がいるだけで、クラウスとセリアは難なく席を確保し朝食を取り始める。
「あの、さっきはごめんなさい」
セリアがおずおずとクラウスに謝る。
クラウスは気にするなとだけ言うと、クロワッサンにかじり付く。
「本当はお客さんの部屋に入るのはダメなのに、早くお姉さんに会いたくて」
クラウスもそこ程度の事は予想がついており、特に何かを言う訳でもなく朝食をたいらげていく。セリアもその様子を見ると急いで食べていく。
二人が朝食を食べ終わる頃には食堂が満席になる寸前だった。クラウスとセリアが食器を片付けると宿を後にして、二人はブラックマーケット街へと歩を進めていた。
活気のある中心街を抜け、ブラックマーケット街へと近付くにつれて人気はなくなりどんよりとした空気になっているのは間違いないのだが、ブラックマーケットの関係者の人間たちだろうか。妙にざわついている中をクラウスと怯えるセリアが通り抜ける。
昨日の診療所の前に辿り着いたクラウスが妙な胸のざわめきを感じ、セリアに右手で止まることを指示する。スプリングを左手に取り、ドアを乱暴に蹴り破り中に入ると昨日とは中の様子がガラッと変わっており、荒らせるだけ荒らしたような跡が残り薬品の香りが鼻をつく。
「あ……おぉ、アンタか」
声のする方にスプリングの銃口を向けるが、そこに居たのはボサボサ頭の緑色の髪色をした白衣の男が腹部に大きな火傷の跡がある。表情には若干の恐怖に怯えるものがあった。
「何があった? この傷はどうした?」
クラウスは白衣の男の傷口に触れ状態を確認しながらも、スプリングをホルスターに戻しながらも周囲への警戒を怠らない。
セリアはこっそりと店内へ足を踏み入れ白衣の男の傷を見るなり、両手で顔半分覆いながらも状況を必死に理解しようと試みる。
白衣の男が苦痛に顔を歪めながらも、口を開く。
「昨日、アンタが連れてきた女に腹を捌かれてな……縫う余裕もなく、焼いてやったよ」
その言葉にセリアは二つのショックを受けていた。
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