第一章 黒腕の剣銃士

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   未だに咳き込むクラウスだが、扉の前で集中砲火が始まればクラウスでなくとも外へ脱出するのは当然の行動だろう。カルマンドは青筋を立て、右手を振り上げるとざわついていた男達は静かになる。 「ブッ殺せェ!!」  カルマンドが上がっていた右手を勢い良く振り下ろす。男達がスナップの銃口をクラウスに向けた。同時にクラウスも左手でスプリングをホルスターから抜き、右手でレザーシースからナイフを抜く。  男達が一斉に射撃を開始する。クラウスは弾を避けつつ、危険な弾のみを右腕で払いのけ、近くの男の腹部へナイフを深く突き立てては引裂き、対角線上でクラウスを狙う男のスナップを撃ち抜き、合わせて眉間を目掛けヘッドショット。  そのままクラウスは止まる事を知らない。まるで蝶のように優雅に舞い、獲物を仕留める蛇のように早く、鷹のように正確に敵の位置を捉える。  カルマンドもここまでの実力差を目の当たりにするとは予想もしていなかったが、更に予想外の事態をカルマンドを襲う。 「ぎゃあぁぁぁぁあっ――カッ、かはっ、マンドさ……ま」  カルマンドが悲鳴の聞こえた方向を見た時には、鮮血に塗れた白衣の男が二階の踊り場から投げ捨てられる。そのまま広間のコンクリートの床に叩きつけられた白衣の男は絶命していた。 「この子に手を出したら――殺すわよ」  カルマンドが視界に捉えたのは二階の踊り場で仁王立ちする女だった。純白の長髪にレッドブラッドの瞳。発する声は女性とは思えない程に低く、殺意が伝わる程に鋭い視線。フィーネとは似ても似つかない女は、長く鋭く伸びた爪に付いた血を振り払う。  カルマンドは背中に背負うハットレアというショットガンを構え、フィーネに向け発砲するがまるで瞬間移動をするかのような速さで、白衣の男の死体の上へと着地する。 「貴方もこの子を傷付ける気なのね」  駆け出したフィーネは早く、あっという間にカルマンドの首元を狙い大きく振りかぶった長い爪が迫る。  しかし、カルマンドの膝にクラウスのスプリングが放った銃弾が命中し、体制を崩したカルマンドはフィーネの長い爪で首を落とされることなく、九死に一生を得ていた。
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