第一章 黒腕の剣銃士

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  「貴方も異能持ちなのかしら?」  フィーネの疑問はカルマンドへと投げかけられるが、カルマンドは目を丸くしたかと思えば馬鹿にするように大声で笑い出す。 「本気で言ってるのかァ!? この場所で使えることに疑問を持つならまだ分かるが、チェインアーツを“異能”だと!? とんだ間抜けだったみてェだなッ!!」  片膝を付き屈んでいたカルマンドの周囲に漂う冷気が彼の両手に集まり、その両手を地面に接地するかどうかの一瞬でフィーネに向かって一本の巨大な氷柱が伸びる。フィーネは力で捻じ伏せようとしたのか氷柱に触れたが、途端にフィーネの表情が凍りつき間一髪で避けるも腹部を先端がつ掠めたのか白いワンピースに血が滲む。  しかし、大した傷を負った訳ではないのに対し、フィーネは自分の手に付着した自分の血を見るなり床にへなりと座り込み、小刻みに震えだした。 「私が、この子の体に……傷を」  フィーネは傷を塞ぐように両手で抑えるが、白いワンピースを血が紅く染めていく。先程とは違い動揺しているのか、レッドブラッドの瞳を揺らし焦りと恐怖に満ちた表情だ。  その様子に驚き半分といった面持ちでニタニタと笑みを浮かべながら、撃たれた脚を庇いながらも立ち上がりフィーネへと詰め寄るカルマンド。 「散々人の部下をブッ刺して血塗れにしておきながらテメェが傷付けば傷心かァ? いいご身分じゃねェか」  カルマンドの右手に冷気が集まり氷のナイフが出来上がり、フィーネの目の前へと仁王立ちすると氷のナイフを振り上げる。 「異能持ちをこんなに簡単に殺せるなら一瞬でもテメェに恐怖を覚えた俺自身をぶん殴り――てェベッ!?」  氷のナイフをフィーネの首元を目掛け振り下ろした瞬間に、クラウスの黒い右腕がカルマンドの顎を打ち抜く。氷のナイフはフィーネの首筋数センチ上を掠め、カルマンドの歯が数本飛び散り、サングラスが宙を舞うと白眼を向いたまま床へ倒れ込む。 「望み通り殴ったぞ……これでいいか?」  だらんと無気力状態の左腕から血が滴り落ちるほどの出血があり、カルマンドを殴った反動ですら痛むのか右手が咄嗟に左腕を抑える。飄々とした台詞の割には表情に余裕と血の気がない。
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