第一章 黒腕の剣銃士

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   ガタガタと揺れながらも細かな瓦礫と歪に歪むドアは腕が一本入る程度にしか開かず、フィーネが除き込むもクラウスの姿が確認できないでいた。  フィーネは自分の無力さに下唇を噛み締め、助けてくれる筈のリンドへ寂しげに眼を向ける。フィーネの姿を追っていたリンドは、フィーネと眼が合うなり顔を伏せてしまう。  その様子を見たフィーネは悲しげな表情へと変わるも細く白い腕でドアを抉じ開けようと、押したり引っ張ったりと激しくドアを揺らすも、声が出ない彼女が出来る精一杯の行動だった。 「助けに来ておきながら……情けない」  フィーネから眼を背けたリンドはポツリと自分を戒めるように呟くき、激しく頭を左右に振るリンドの視界にふとダッシュボードが入る。まるでスイッチが入ったかのようにダッシュボードを開け、無造作に置かれたスナップを取り出す。  普段自ら握る事がないスナップを手にし震えながらも運転席を飛び降り、リンドは蹌踉めきながらもフィーネが開けようとするドアへと駆け寄る。 「危ないから……離れてなさい」  リンドはドアのヒンジへ未だに震える腕で標準を合わせながら、フィーネにドアから離れるように促す。こくりと小さく首を縦に振りリンドの後ろの方へと退く。  リンドが握るスナップが火を吹き、弾がドアへ当たるもののヒンジへは命中しない。数発撃つ間に上下に二箇所あるヒンジのうち上のヒンジが弾け飛ぶ。ドアはガクンとバランスを崩したようにフィーネが入れる程に開く。  そこからはリンドとフィーネがドアに体重を掛けると薄皮一枚で繋がった状態だったドアは残ったヒンジを捻じ切り地面へと転がる。  フィーネは飛び込むように廃工場の中へ駆け込みクラウスの元へと行く。リンドも後を追うように建物内へと入るが、ハードランディングの集団が壊滅状態であることを知り腕の震えが途端に治まり、クラウスへと駆け寄る。 「酷いケガだ……」  リンドも眼を背けたくなる程だが、フィーネはクラウスの胸に耳を当て心音を確認するとリンドを見上げる。  リンドは頷き、クラウスの上体を起こしフィーネが支える間にクラウスの体を背負う。フィーネは後から落ちないようにと手を添えゆっくりとリンドの車へと向かった。
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