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スナップを二丁構えたままのフライドは、漂う火薬の香りと硝煙が風に流され視界が晴れ、黒髪の男の姿を見て冷や汗がタラリと頬を伝う。
「左眼の眼帯に、黒い右手。アンタが黒腕の――ッ!?」
黒髪の男は腰のホルスターからスナップの改造銃であるスプリングを抜き撃ち。フライドは右腕から流れ出す血と共にスナップを落とす。
「降伏するなら命まで取る気はないが? 欲しいのはアンタの首にある賞金だけ」
黒髪の男は左手に持つスプリングをホルスターに戻してしまう。すると、フライドが高らかに笑い出す。
「アホかお前は!? 敵の陣地に乗り込んで我が物顔とは笑わせる! テメェ等ッ! エモノを持ってこい!」
フライドの声はどこまでも聞こえるのではないかと思う程に響く太い声だった。しかし、集まったのは数人だった。
「隊長。他の兵は奴に……」
フライドの後ろからやって来た数人のうちの一人がフライドに耳打ちをした。途端にフライドの表情が青白く一変した。少なくとも二十人以上はいたのだ。それが指で数えられる程度に減っているのは誤算だった。
「交渉決裂って事で、いいな?」
ゴールドスパークの右眼をした黒髪の男が痺れを切らしたかのように動きを見せる。スプリングを素早く抜き撃ち連射し、フライドを囲む迷彩柄のカーゴパンツを履く男達の太腿や肩を撃ち抜いていく。
屈強な肉体を持つわりには銃弾一発に悶え苦しむといった醜態を晒していた。
「じゃあな」
スプリングの銃口を向けられたフライドはスナップを連射するが、黒髪の男は自分に当たる軌道の銃弾だけを右手で叩き落とし、スプリングから放たれた銃弾がフライドの眉間を貫通し、膝から崩れ落ちると辺り一面に血溜まりを作った。
痛みに耐えていたフライドが従える兵も、フライドが死んだことにより蜘蛛の子を散らすように逃げて行くが、黒髪の男は追い打ちをかけることもせず、ホードと呼ばれる端末機械を取り出す。フライド・ヴァインの無力化と位置情報を伝えるだけといった簡潔な内容の通話だった。
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