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三味線の音色にしてはちょっとおかしな音だ。猫の声と三味線の音色が混ざり合ったような響きだ。『鳴った』というよりも『鳴いた』という表現の方がしっくりくる。
すると、にょきにょきと手足が生えてきて前足をグググゥーと前に突き出すようにして伸びをすると、ポンと頭と尻尾が現れ大欠伸をひとつした。夢でみた姿そのものだった。沙紀は口をポカンと開けて呆然としている。
三味線と猫が一体化した姿は、奇妙奇天烈に違いない。
「おや、彰俊様ではございませんか。またお逢いできましたね。そういえば、まだ名乗っておりませんでしたね。小生、三味線猫のシャセと言います」
「あ、どうもご丁寧に」
思わず彰俊はお辞儀してしまった。
「ああ、沙紀様がここへ連れてきてくれたのですね。ありがたき幸せ」
沙紀はまだ呆然としたまま。
「シャセ、おいらはトキヒズミだ。よく覚えておけよ。一応ここではおまえより先輩になるからな」
「あ、はい。で、早速ですがお話があります」
「話?」
シャセは頷き話し出す。
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