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「なぁ、真野、どんな様子だった?」
泣いたのだろうか。そう思っていた信崎だが、大池から返ってきた言葉は、
「信崎さんが幸せなら良いんだって、そればかり言っていましたよ」
と珍しく口元を緩めて、真野らしいと思いませんかと、大池が信崎を見る。
「そうだな」
自分の事よりも信崎の幸せを想う所が、真野らしくて胸が締め付けられる。
ほどなくしてタクシーが着き、またなと別れを告げると、
「はい。真野の事、頼みます」
そう頭を下げる大池に、解ったと声を掛けてタクシーに乗せる。
行先を告げて走り出したタクシーの中。肩に寄りかかる真野の重みを感じながら、外へと視線を向けた。
寝たまま起きない真野を家へと連れて行きベッドへと寝かせる。
真野に嫌われていると思っていた時期があった。
だがそれは、自分を好きだから避けていたのだと知った時、嫌われていなくてよかったと思った。
告白されて信崎の気持ちを正直に話したが、それからも真野はこんな自分を好きでいてくれる。
だからと、それに甘えていた部分もある。
家事をしてもらう事も、その一つ。
お礼だと言って一緒に食事をするときも、駅まで送っていくときも真野はいつも楽しそうで、そんな彼の顔を見る度にもっと可愛がってあげたいと思うようになっていた。
動物園に誘ったときだってそうだ。嬉しそうな表情を浮かべる真野に、自分だって一緒に動物園へ行くのが楽しみだと思っていたのではないのか。
だからあの時、帰るといった真野を引き止めたのではないだろうか。
「……馬鹿だな、俺は」
自分が幸せなら良いなんて、そこまで想ってくれる相手を、愛おしく思えないわけがない。
これはもう自分の気持ちを認めないといけない。信崎の中で真野が占める割合がいつの間にか大きくなっていた事を。
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