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後輩は先輩に片思い中
会社の先輩である信崎に恋をして、想い悩んでいたのはつい最近の事。
告白をしてふられてしまったけれど、
「もっと信崎に自分の事を知ってもらおうよ、ね」
そう喫茶店のオーナーである江藤に励まされ。真野はこの恋愛に終止符を打つことなく進もうとしている。
信崎は真野の気持ちを知っても、今までと変わらずに後輩として可愛がってくれる。
いくら男同士に理解があるからといっても、いざ、自分に好意を向けられたとしたら困るだろう。だが、そんな素振りを見せる事もない。
だから真野が信崎の優しさにつけこむのは仕方がない事。
酒に酔った勢いで、下心いっぱいに好きな人に甘え、うまく家へとお持ち帰りしてもらった。
なのに、だ。部屋を見た瞬間に酔いは一気に醒めた。
――なんだ、このゴミ屋敷は。
出かかった言葉を咄嗟に口を押える事で飲み込んだ。
「いやぁ、忙しくて掃除する暇なくてさ」
そう頭をかきながら笑う信崎に、真野は身を震わせながらボソッと呟く。
「……掃除」
「ん?」
「掃除するから信崎さんは風呂に入っていてください!!」
籠の中に突っ込んだままのバスタオルと下着を手渡してバスルームへと押し込む。
「え、あ、真野くん」
何か言いたそうだが無視をして袖を捲りあげる。
せめて座れる所は確保したい。
散乱している雑誌類をひとまとめにした後、干して乾いている洗濯物は箪笥の中へとしまい、洗濯物は籠の中へと入れる。それから洗っていない食器は流し台に置きごみを拾い袋へと捨てる。
どうにか片付いた所に、風呂上りの信崎が髪を拭きながら「随分と綺麗になったな」と言われて、引きつりそうになりながらも如何にか微笑んで見せた。
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