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そんな事を言わせたかった訳じゃない。浩介と一緒に楽しんでもらいたかった。
真野の事を考えていたら、
「ちょっと、話聞いてるの?」
と絵理に言われて我に返る。
「あ、すまん」
ぼっとしていたと素直に謝ったところで、メールが送られてきた事を知らせる着信音が鳴る。
見てよいかと断りを入れてからメールを開けば、相手は江藤からで。家に来てほしいと言う知らせだった。
「絵理、江藤からお呼び出しくらったから行くわ」
「そう。なら浩介はこのまま引き取るわ」
「宜しく頼む」
坂下との事はまた今度といい、寝ている浩介の頭を撫でる。
「じゃぁね。江藤君に宜しく言っておいて」
「あぁ。またな」
江藤のところへと為に絵理に別れを告げ、駅へ向かって歩き出した。
家へ着くと、待っていたとばかりに部屋の中へ連れて行かれ。そこには泥酔状態の真野がクッションを抱えてへらへらと笑っている。
「どうしてこうなったか、お前は解っているよな?」
仁王たちで立つ江藤に、解っているとばかりに頷く。
動物園でのことが原因なのは間違いないだろう。
信崎は真野の傍へ寄るとしゃがみ込んで真野の事を覗き込む。
「あれぇ、のぶさきしゃん」
えへへへと、酔った真野が抱きついてきた。
「この後の事、お前に任せていいよな」
「あぁ。連れて帰るよ」
「よろしい」
真野に立つように言うと、怪しい足取りで起ちあがる。
その身を支えるために真野の腕を自分の方へと回して腰を抱く。
「信崎さん、タクシーを呼びましたから」
下まで一緒に支えますと大池が手を貸してくれる。
「悪い、頼む」
江藤にまた後でと声を掛けて大池と共に外に出る。
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