第1章

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日差しが射すように熱い、8月下旬。今年は季節が少しずつずれているかの如く夏に入るのも遅く、未だに夏の真っ只中のような暑さがインドアな俺の肌を焼く。 夏休みの濃い記憶なんてものは慌ただしく終えた宿題のラストスパートぐらいで、他はずっとパソコンの青く輝く画面と陰鬱とした気分に身を任せたまま流れる暇に項垂れる自分の姿がそこにあるのみだった。 昨日に始業式を終えた普津摩高校では通常授業が始まりだした。限りなく憂鬱な学校生活が再び開始したのだ。 通学路を歩く自分の周りには友人と楽しげに話ながら歩く同じ普津摩高生が夏休み明けの授業の面倒さを熱心に語っている。 俺にはそんな姿が何とも眩しく見える。学校では何時も孤独で、孤独を隠すように読書をする俺にとっては非常に羨望してしまう光景だ。 暑さの中で友人との交遊なんて意味を失った学校の意味をうっすらと考える。学校は勉学に励む場所。そんなものは通信教育なんてものがあるせいですっかり潰えている。 意味ではなく理由ならば、親や妹の憐憫の視線を受けたくないからなんて、後ろ向きな理由ばかり並び立っている。 だが、そんなものではこの足を進めるモチベーションにはならない。そんな理由はこの暑さの中に飛び込む時に全て消費済みなのだ。 冷房器具なんてものは教室の端で申し訳程度にかかる扇風機程度のもので、あの生温い不快指数を上げるためだけに存在するような教室は地獄への予行演習場なのではないか、なんて訳の分からないことまで脳裏に浮かぶ始末だ。 ともかく、意味はなくとも理由がある以上動いてしまうこの少憎たらしい己の足を恨みながら、集団の中の孤立者になるため学校前の長ったらしい坂道をダレ気味の精神を引きずるように登る。 ここまでくると周囲の学生は格段と増えて、さらに俺の孤独を引き立ててくる。 あぁ、世界にはそれこそ売れるほどに人間がいるというのに何故俺の友人という需要が高い人間がいないのか、はたはた不満である。 こんな友情の欠片もない学校生活はほぼシール目当てのお菓子に肝心のシールが入っておらず、対して美味しくない駄菓子を食べてる様なことと同じだ。 簡単に言うなれば、 ボッチの学校生活は非常識な程退屈でつまらない。
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