第1章

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中々モチベーションが上がらない己の足が遂に学校の昇降口に着いてしまった。それはつまり、日陰という救済と俺の人の海の中のガラパゴス諸島化が本格的に始まるということだ。 インドア派らしくあまり汚れのないスニーカーからほんのりとついた砂を落とし、踵を揃えて一つため息をついて下駄箱に入れると同時に退屈の鳥籠となるべく上靴という名の囚人靴に履き替える。 自分は自分の人生の主人公だ、なんて言葉を耳にするとモブキャラその一としか言えない平凡な自分がなんとも情けなく感じる。恥を掻かないために適度に授業についていき、置物のように席に座る自分を主人公にすればなんとも退屈な物語になることだろう。 とはいえ、そんなモブキャラにだって欲というものは存在する。まず、モテたいなんて基本的な思春期男子の欲や、誰かに認めてほしいといった欲が存在している。 まぁ、モテたいなんてのはここ二、三年間まともに女子と話していない自分には不可能とも言えるだろう大業だが。 ……そもそも何故俺はボッチなんだろうか?普通に会話も出来れば、人についての好き嫌いが多いなんてこともない。性格は多少面倒らしいが、少し馴れれば気にならなくなるレベルだと中学時代の友人には言われていた。 ならば容姿かと言われると、平々凡々なこの顔に人を寄せ付けない特殊能力があるわけなく、モブキャラ度を促進させている。 原因があるとすればちょいと心配性でシャイボーイなくらいだ。それだってそこまで酷くない。あっ、後、ほんのりと影が薄い。 半場諦めに似た感情が沸き上がっているが俺も語り合うことが出来る友人が欲しい。部活も帰宅部だし、いっそ隣〇部でも作ってやろうか。…無理だな、この学校はそこまでゆるゆるに部活を作ることを認めてはくれない。 …とりあえず、今日は友達作りでもしてみようか。うだうだ考えても友達が湧いてくるでもなし。いや、スポーンしてくれるならそれでもいいんだが、RPGのモンスターでもないからな。 うん、そうと決めたならば迅速に行動しようではないか。決意は遅くとも行動は迅速に、だ。 本日のチャンスタイムは普段は死ぬほどの気まずさを味わう、あの体育のペアになって準備運動をするあれだな。今日の体育は三時間目、少しでも積極的にペアを探していこう。
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