第一章 隠蔽擬態

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第一章 隠蔽擬態

ー竹島精機ー 打ち合わせスペース 服部は、中途採用が決まった竹島精機という会社にいた。 簡単な机が置かれた打ち合わせスペースのような所で入社の説明を受けているのだ。 普段は社員が様々な利用をしているのだろう。 簡単に整理されてはいるが、資料や新聞が置かれていた。 「…、でうちの会社の規定は…」 「はい」 アクビを噛み締めながら、服部は真面目な表情を崩さなかった。 「あなたにやってもらう仕事内容ですが…」 メモを取ろうとした服部の手が無造作につまれた新聞に触れた。 「失礼します」 肩の辺りまで伸びたストレートヘアの眼鏡の女子社員がお茶を持って来てくれた。 すぐ踵を返すかと思った彼女は、驚いたことに先程服部が邪魔に感じた新聞をまとめようとした。 (お茶を置いてすぐ行かない人初めて見た) 服部が驚いて見ているのに気が付いたのだろう。彼女は慌てて一礼すると戻っていった。 「何してるの!お茶を置いたらすぐ戻りなさい?迷惑でしょ!」 服部の背後で叱られている声が聞こえた。 「申し訳ありません」 抑揚のない謝罪が聞こえた。 「全く、常識で考えたらわかるでしょ」 (新聞邪魔そうだったとか、言い訳しないんだ) 服部は思った。
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