第一章 隠蔽擬態

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「失礼します」 ハイヒールも、液体を運ぶのも苦手な山下は、お茶をこぼさないよう必死だった。 一礼をして立ち去ろうとすると、邪魔そうな新聞を見つけた。 (あ、ついでに持って行くか…。) 新聞をまとめようとした山下は、視線を感じる。見ると、スーツの男が驚いた顔をしていた。 (やば!) 自分がおかしな行動をしていた事に気がつくと慌てて一礼をして、立ち去った。 (うわ、また怒られる) 案の定間髪を入れず、一番年上の滝川が山下の所へやってきた。 「山下さぁん。何してるの!お茶を置いたらすぐ戻りなさい?迷惑でしょ!」 (やっぱり来た。なんで一挙一動見てんだよ。てめーの仕事しろや) 「申し訳ありません」 短くそう言うと、頭を下げた。 「 全く、常識で考えたらわかるでしょ」 深く溜め息をつきながらそう言うと、滝川は席へ戻った。 (私の常識じゃ、お客に邪魔になっているものは、気が付いたら、片付けるべきなんだよ)
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