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「失礼します」
ハイヒールも、液体を運ぶのも苦手な山下は、お茶をこぼさないよう必死だった。
一礼をして立ち去ろうとすると、邪魔そうな新聞を見つけた。
(あ、ついでに持って行くか…。)
新聞をまとめようとした山下は、視線を感じる。見ると、スーツの男が驚いた顔をしていた。
(やば!)
自分がおかしな行動をしていた事に気がつくと慌てて一礼をして、立ち去った。
(うわ、また怒られる)
案の定間髪を入れず、一番年上の滝川が山下の所へやってきた。
「山下さぁん。何してるの!お茶を置いたらすぐ戻りなさい?迷惑でしょ!」
(やっぱり来た。なんで一挙一動見てんだよ。てめーの仕事しろや)
「申し訳ありません」
短くそう言うと、頭を下げた。
「 全く、常識で考えたらわかるでしょ」
深く溜め息をつきながらそう言うと、滝川は席へ戻った。
(私の常識じゃ、お客に邪魔になっているものは、気が付いたら、片付けるべきなんだよ)
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