離れない、ずっと一緒だよ

1/7
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

離れない、ずっと一緒だよ

 呼び止められて、振り返るとそこにはカノジョがいた。  あの時に約束した言葉が、頭のなかで鮮明に蘇る。 「離れない、ずっと一緒だよ」  海よりも深く愛していたのに、ぼくはそれを記憶の水底に沈めていたんだ。  その遠い過去の、幼かった日々の記憶が、水面に浮かぶ泡のように弾けた── ──────── ────── ────  ぼくは孤独だった。愛に飢えていた。  小学校でイジメられていた。  まわりの子供とうまく喋れなかった。それは、ぼくが引っ込み思案だから。  それとほんの少し、母子家庭だったこともある。母は働きづめだった。昼はパートで、夜はコンビニのレジをしていた。  子供は残酷だ。ほんの少しの差違が、大きなイジメに直結する。  コンビニでレジを打つ母を見て、「お前の母ちゃん、コンビニ母ちゃん」とからかわれた。  わざわざ母のレジに並び、ぼくから巻きあげたお金で菓子を買った。  ばくは心のなかで泣きながら、顔では笑っていた。ぼくにむけられる手は、イジメのゲンコツだけ。  すぐに不登校になった。たまたま風邪で休んで、それから学校へは行けなかった。  毎日働いている母に申し訳なかった。こんな悪い子はいらないと思った。  きっとぼくがいなければ、毎日働かなくてもいいと考えた。母に迷惑がかかるから。  死を考えた。自殺を思った。孤独だったから。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!