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そんなとき、ある噂を知った。
不登校の子が集う掲示板で、トモダチという遊びを読んだ。
タルパとか人工精霊というムズカシイ言葉はわからないけれど、妄想力とか想像力でトモダチをつくるらしい。
それなら、ぼくは得意だ。
鍵っ子になったときから、毎日まいにち部屋に閉じこもって想像していた。
自分が自由になることを、暗い部屋のはじっこで夢見ていた。四畳半のせまい部屋だけが、ぼくの世界のすべてだった。
トモダチをつくる。自分にだけ見えるトモダチを。
それにぼくは夢中になった。夢のなかで、夢からおきて、部屋のなかで、母のいない部屋で、毎日まいにち想像したんだ。
部屋にトモダチがいると想像する。髪を、眼を、口を、服を、全身を想像する。
やがて、目の前にトモダチが見えるようになった。
トモダチは女の子だ。ちょっとだけ髪の短い、笑った顔のかわいい、少しだけおませな女の子。
最初は部屋のすみっこに見えるだけだった。でも、すぐに話せるようになった。
「ミノル君、こんにちは」
トモダチがあいさつをした。
「ミノル君、さびしそう」
トモダチが憐れんでくれた。
「ミノル君、あたしと一緒」
トモダチが同情してくれた。
「でも、あたしと一緒なら大丈夫だよ」
トモダチが本当の友達になった。
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