離れない、ずっと一緒だよ

4/7
前へ
/7ページ
次へ
「ぼくは死にたいんだ」 「ミノルだけを愛している」 「ぼくはきみと死にたい」 「ミノルはどんな死に方がいいの?」 「ふたりで一緒に死ぬんだ」 「ミノルとあたしで一緒に死ぬ。心中という死に方ね。それはキレイでロマンチックね」 「きっと、きみとなら苦しくないよ」 「ミノルと一緒なら、あたしは平気だよ」 「死んでくれる?」 「死んであげるわ」  ふたりで死ぬことに決めた。  家の近くに河がある。そこは毎夏、水難事故がおこるので遊泳禁止になっていた場所だ。  そこでカノジョと心中することに決めた。  コンクリートでできた半円柱型の取水塔が、灰色の墓標みたいに見えたからだ。ぼくとカノジョの、永遠の愛を誓った記念碑だ。  取水塔につづく白い橋を渡り、カノジョと一緒に河に飛びこんだ。  河の水は冷たく、あごの下まで深かった。でも、カノジョの手は温かく、愛は海よりも深かった。 「ミノル、来て」  カノジョが手を引いた。 「永遠の愛を誓って、口づけをしましょう」  長い睫毛の眼を閉じて、ぼくの手を強く握った。  その頃にはつま先立ちしないといけないくらいに、水が深くなっていた。  ジャブジャブと打ち寄せる水が、ぼくの頬を打った。キーンと耳鳴りがした。バクバクと心臓が鳴った。 「離れない、ずっと一緒だよ」  カノジョの顔が近づいた。眼を閉じて、やさしく微笑んで。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加