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確かに、金か命だ。でも、限定がある。
「自分の稼いだ金ではない場合、無効となる。それが暗黙の了解である。世界、歪みを外して欲しい」
神という存在と、世界という力、両方を適当に使うのが人間になる。
「神使いが何でしょうか?」
俺は、神也と巳杞の神を、在るべき位置へと戻した。
「俺の命は、神に全部くれてやりました。それでも、親や一族が守ってくれた、この存在、消せないでいるだけです」
殺したければ殺せばいい。それでも、俺の中の神は渡すつもりはない。
「帰ります」
この家には二度と来たくはない。
「ふざけるな!子供一人で何が出来る?アパート一つ借りられないだろう」
嘉盛は、真っ赤になって怒っていた。
「私の権力を舐めるな。学校にも行かせてやっているのだぞ。お前の身分で、名門にはいけないだろう。我が家で推薦したからこそだ」
どんな権力だ。
「…そこの二人、もう神はいませんよ。どんな方法を使ったのか知りませんが、金で付けた神は、簡単に消えます」
神也と、巳杞は馬鹿にして笑っていた。でも、嘉盛だけは、真実に気が付いたのか、再び真っ赤になって怒りだした。
「ここで、神憑きは、俺と安廣さんですよ。善家が安廣さんを他家に出せば、神憑きの系統から外れますね」
でも、芽実とは結婚して欲しい。
「……今日は、帰れ」
嘉盛が、塩を持ってこいと怒鳴っていた。
「あの、神に塩は効きません。そこの二人、澱んでいるので神祓いにはもってこいですよ。どんな神も避けるでしょうから」
余計なことを付け足しておく。神は、金で付けると、人間が澱むのだ。
でも塩を撒かれて、外に出されてしまった。外に出ると、駅に向かって歩き始める。安廣は、追い出されるまでには至らなかった。安廣の育った家なのだ、両親もいるのだろうし、ゆっくりと話して欲しい。
しかし、駅に付く前に、安廣の車が俺の横に止まっていた。
「乗っていきなよ。俺も怒らせて、追い出されたよ」
俺は、溜息をついた。でも、車の後部座席に乗り込むと、安廣の両親、俺の相父母が乗っていた。
「一緒に食事をしましょう」
にこにこした老婦人は祖母であった、あれこれ安廣に注文を出していた。優しい口調であるが、有無を言わせない。
訂正する。善家には、他にも神憑きがいる。俺の、祖父である。寡黙を通り越し、既に置物のようだが、二体の神が憑いていた。
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