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芽実は長女で、すぐ下の妹は嫁に行っていた。末っ子の弟が、芽実のパン屋の二階でレストランをしている。弟が居るからと家を出た芽実であったが、いつの間にか婿取り娘になっていた。芽実の実家は、農家が本業だが、観光農園もしていた。今は、芽実の嫁に行った妹が実家を手伝っているらしい。
ここで、簡単な解決策は、二男である安廣が婿に行けばいいのだ。しかし、安廣は俺という問題を抱えていた。しかも、芽実も森のくまの経営者であった。芽実も、家を継ぎますとは、簡単に言えない身分であった。
「本家の言い分としては、俺を本家に預け、安廣は婿に行ってもいい、だろうな」
本家、安廣の兄、嘉盛(よしもり)が家を継いでいる。
「叔父の嘉盛はな、俺を預かるのではなく、俺の中の六人の神を得て、七人揃えるつもりの人でさ…」
嘉盛は、七人の神を揃え世の中を変える、そう言い、安廣と大喧嘩になった。
俺は、誕生祝いの予約をしていた、レストランへ向かう途中で起きた事故のせいで、居合わせた全ての人の神を貰った。俺の中には六人の神が憑いている。
「神を七人?」
「そう、七人揃うと、世界が変わると言われている。叔父は俺を殺して、息子か娘に神を移動させようと企んでいる」
嘉盛の息子と娘には、既に神を一体憑けているらしい。
「殺されそうなのに、行くの?」
「行かないと、もっと殺されそうになるからだよ」
七人揃えたい側と、七人揃う前に殺したい側、両方が俺を殺そうとしていた。
途中の商店で、琥王が朝食用の牛乳を購入していた。混みあう商店でも、やはり女子生徒は琥王を見ている。長身で、モデルのような体躯、どこに居ても目立つ。
俺は、待っていると見比べられるので、先に歩いていた。学校は、目の前にある。
七人、守護霊もチームになっていて、一人から七人程度で組んでいる。その中に一人神が居るだけでも、かなり珍しいのに、俺には六人憑いていた。しかも、チームの守護霊は、一人を守るのではなく、幾人かを纏めて守る。俺は、纏めて守られてもいない。贅沢だと言われるが、その分、常に眠っていないと(常に人間を狩っていないと)維持できない。
神も無償ではない、金か命が必要であった。
「薬師神、待てって」
どうせ、同じ学校に行くのだから、待っている必要もない。
琥王が走ってくると、俺の隣に並んだ。
「走ったら、汗をかいたよ」
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