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すると、返信があり、ここに来てみるという。記憶と合致している箇所が多く、実際に見てみたいらしい。住所を送ってみると、礼の返信があった。
「琥王、遅いな……」
ふと、琥王の携帯電話にコールしてしまい、しまったとすぐに切る。これで、俺のナンバーが琥王にバレてしまった。
「呼んだ?」
しかも、琥王、すごく近くに居たのだ。琥王は、ニヤニヤと笑いながら、携帯番号の登録をしていた。
「依頼主、ここに来てみるってさ」
「そうだな、見つかるといいね」
神社にはまだ女子中学生が居るので、俺は、近くの寺に行ってみた。無人の寺で、周囲が墓に囲まれていた。まるで人気はないが、民家は近い。
「ロープ……」
俺達の行動がかなり怪しい。ロープを取り出し、まるで首つりのようでもあった。犬を散歩させている、通りすがりの人が、訝しげにこちらを見ていた。
「心中みたいか?心中、いい響き」
琥王が呑気で笑っているが、俺には、バイトもある。早く帰宅したい。
「あ、人を呼んでいる」
去って行った人を遠視すると、家で誰かを呼び、再びこちらに向かっていた。
「琥王、飛ぶぞ!」
面倒は困る。慌てて飛ぶと、琥王が半分落ちかけていた。
「薬師神、もう少し丁寧に飛べ!」
「うるせえ!」
耳元で叫ばないで欲しい。
「でも、夜の空中はいいな……」
街の光が小さく見えていた。今何時だと腕時計を見て、つい琥王を支えていた手を離してしまい、絶叫が聞こえた。
「あ、ごめん」
「ごめんじゃない。死ぬかと思った」
琥王の腕力は強い。俺の腹に手が喰い込んでいた。
「じゃ、降りるよ」
今度は、早めに減速してゆく。夜なので、そんなには目立たないだろう。ベランダに降りて、とんでも無い事を思い出した。
「薬師神君、飛べるのか」
塩冶に、俺は飛べるという説明をしていなかった。どう、説明したら良いのかも分からない。
「まあ、神憑きだからね。多少はアリなのかな」
ベランダでビールを飲んでいた塩冶は、何も気にしていなかった。
「塩冶さん、店はどうしたのですか?」
「働きたくないと願ったら、店員を造ってしまったみたいでね……」
塩冶の返還の血の力にも、困ったものだと思う。
「人は、作らないでください」
世界の修正では、桐生も消してしまうかもしれないのだ。頻繁に修正がかかる事態になれば、塩冶自体も還されてしまう。
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