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別にしておいた朝食まで、持ってゆかれていた。
「…明日から、場所を変えよう…」
これでは、ゆっくりと朝食が食べられない。
「そうする」
手に持っていたパンがあって良かった。他に、保温の弁当箱に入れられていた、パンのグラタンがあって良かった。どうにか食事ができる。
で、次の日は、鞄を置くと、ベランダで朝食にした。この学校のベランダは狭いので、三人固まれば隙間もなくなる。幾人もが、教室を覗き、不在の理由を聞いていた。誰かがベランダを指差すと、何か不満を言っていた。
「どうにか、朝食にありつけた」
琥王に、試作品のパンを渡す。忽那は、いつものパンを取ると、周囲にも配っていた。
「今度、えんきり屋に持って行こうかと思ってさ。シフォンケーキ森のくま」
紅茶のシフォンケーキではなく、緑茶にしてみた。サッパリしていて食べやすいが、コーヒーには合わない。緑色をしている。
「抹茶ではないの?」
「定番は避けてみた」
そこで、チョコを合わせてみると、意外にもおいしかった。ほろ苦い生地に、チョコのコーティングが薄くかかる。これならば、コーヒーにも合う。
幾人もが教室を見ているので、見かねた琥王が余ったパンを持ってゆき、何か喋りながら配っていた。
「琥王は、世渡りが上手いよね……」
「薬師神は、極端に世渡りが下手だからね」
しみじみと、忽那に言われてしまった。俺は、クラスメートも忽那と、藤井くらいしか知らない。後は、顔は知っているという感じで幾人かはいるが、ほぼ話したことがない。
「最近、薬師神、女子からも、森のくまで働いているで、かなり親近感を持たれたみたいよ」
親近感を持たれても、特に変わった事はない。相変わらず、避けられている。
「ミーティングが始まるよ」
席に戻ると、机の上にメモがあった。『パン食べてごめんね』無記名ならば、無いほうがいい。俺は、メモをゴミ箱に捨てていた。
「今日は、長距離走だってよ」
二時限目から、疲れることをさせないでほしいが、体育が長距離走であった。十キロ程、走って来いという。それは少し長いのではないのか。授業中、最初から走り、最後まで走らなくてはならない。
でも、俺はたいして苦にはならない。しかも、学校から出て外のルートを走って来るコースであった。外は、退屈しないで済む。それに、監視も少ないので、地図さえ覚えていれば、ただ走っていれば良いのだ。
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