第1章

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「で、琥王も一緒か?」  隣のクラスも一緒になっていた。 「薬師神、体力あるな…」  琥王も楽そうに走っていた。そう言えば、琥王から、朝夜とランニングしていると聞いていた。 「神憑きだからな…」  学校の近くでも、駅までしか詳しくはない。反対側も少しは知っているが、異なる方向には異なる街があった。案外近くに、小学校もあった。  小学校を回ると、戻る方向となる。学校が坂の上で、最後が特にきつい。流石に、喋りながら走る余裕はなかった。 「ゴール!」  終わったと叫びたい気分であったが、先に叫んでいる何かがあった。 「何?」  ゴールから見上げると、屋上に誰か立っていた。 「私なんて!死んだ方がいい!」  屋上で、何か主張している女子生徒が居る。青春だなと通り過ぎようとしたが、どうも、飛び下りをしようとしているらしい。学校は四階で、落ちると死ぬのだろうか。もう少し高い建物を選んだほうがいい。 「今日!好きな人にメモを渡したら、即、捨てられました!」  メモ?そう言えば俺も捨てた。  危ないとか、色々と叫びながら、先生が屋上を見上げていた。屋上にも誰か居るようであった。やめなさいなどの、声だけは聞こえていた。 「パンを買って世間話をしたら、大変なことになりました!」  パン? 「お母さんは、息子が修学旅行に行かないとは知りませんでした!ごめんなさい!」  お前か…… 「他に教室での事も教えてしまいました!いっぱい、いっぱい、ごめんなさい!」  あ、もう、飛び下りて欲しい。というか、俺が飛びおりたい。 「中学から一緒でした!でも、名前も憶えて貰えないから、メモに名前書きません!」  俺が悪かったのか、確かに、名前を憶えていない。でも、分かる。  人には名前がある。個を識別するための番号のようなものだと、俺も当初は考えていた。でも、神が個を認識しないことに腹をたてて、今は魂を透視することを覚えた。魂は、名前を大切に持っている。 「洲永 巴子!(すなが ともこ)」  俺が叫ぶと、上の女子生徒がやや驚いていた。 「名前の由来は、母親の一番好きな街が巴里だから。巴里と付けようとして、止められた。そこで、巴子と付けた。違うか?」  魂にそう書いてあるのだ。 「……合っています!」  怒鳴らなくても、聞こえている。 「修学旅行の件は、相当、腹が立ったが許す。保護者に言っていない俺が悪い」
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